■ 序章
いや、行くしかないでしょ。横浜開催は機を逃してしまったので、今回は週末を利用して名古屋へ遠征。場所は名古屋市栄オアシス21。夕方に着いたんだけど、まず驚いたのは人の多さ。朝から開催しているにも関わらず、夕方になっても長蛇の列。次から次へとやってくる...。「コナンファンってこんなに居たの？」と驚きを隠せない。客層は10代から20代がほとんど。カップル率が異様に高し。中には40〜50代のオッサンも居たが、明らかにコア層だろう。臭いでわかる。気合いの入り方が半端無かった。しかし気合いの入れ方という意味では俺に勝る者は居ない。何故なら俺の服装は完全にコナン某キャラのコスプレを施してあり、その点で抜かりは無かった。

■孤独な写真撮影
順を追ってレポートする。最初のイベントは写真撮影。漫画原作の表紙を枠組みとしたプリクラみたいなのと、コナン＆新一の象の横で撮ることが出来る。これは独り身には厄介なイベント。前者は機械の中で撮影するからともかく、後者は列に並んでいる順でスタッフに撮ってもらうので、後列の客の視線は自分に注がれてしまう。とは言ってもそんなものに今更物怖じする俺では無い。「真実はいつもひとつ！」と叫びながら撮ってもらう。が、写真を確認すると目を瞑っているではないか。湧き上がる怒りを抑え撮り直したい旨を声高らかに主張する。スタッフと列に並ぶギャラリーが一瞬ざわめいたが、気にすることなく二度目のチャレンジ。今度は成功。何故か後列のギャルにもカメラを向けられていた。

■ライバル探偵現る
会場を進むと、まずやってくるのが展示コーナー。プロフィール含めた大勢のキャラの原作絵がところ狭しと飾られている。灰原哀、キッド、ベルモットあたりの人だかりは凄い。そこを抜けると、目の前には毛利探偵事務所を再現した部屋。なるほど、再現率が高い。
ここからが本番。事前に手渡された探偵手帳に記された「事件」を解くヒントがこの部屋に隠されている。手帳内には、Q1、Q2...というふうに幾つものクエスチョンがあり、ヒントを元にそれらを解いていくと、最終的に事件の犯人がわかるという仕組み。
俺の推理力を披露するときがようやくやって来た。ふと、隣を見ると最初に見かけた40〜50代のオッサンが居た。俺の視線にオッサンも気づく。「俺とやろうってのか？」「...ああ」俺たちは目で無言の会話を交わす。負けられない戦いがここにある。が、いざ解き始めるといささか難しい。「わかった！」という子供の歓声が俺を極限まで焦らせる。オッサンを見ると、額に汗が滲んでいた。間違いない、こいつも苦しんでいる。熟考すること20分...閃いた。「アッー！●●じゃん！」と叫ぶ。すると即座にスタッフが寄ってきて「答えがわかっても口に出さないでください」と注意されてしまった。おっと、俺としたことが歓びのあまり、我を失ってしまったか。勝利の笑みを浮かべ、隣を見るとオッサンの姿は無かった

■サインコーナーにて遠藤とカズを発見
事件のヒントが隠されているのは毛利探偵事務所だけではないので、足を進める。壁には原作の名シーンが飾られている。さらに、事件のトリックを再現したコーナーまであるではないか。これは原作ファンにとっては喜ばしい。
更に足を進めると、有名漫画家やアーティスト達のサインコーナーがあった。あだち充や高橋留美子といったサンデーの黄金期を作ってきた漫画家たち、B'zや柴咲コウなどコナンの映画主題歌に携わってきたアーティストたち、更に遠藤保仁と三浦知良のサインまであった。彼らは映画に出演したことがあるので、その繋がりだろう。

■事件解決。勝者は...
展示コーナーにて、ヒントを見つける。クエスチョンを全て解かねば、犯人は見つけられない。オッサンの姿を発見する。振り向くオッサン。「やっと来たか。遅いな...」「いや、勝負はこれからだ」またもや無言の会話を交わす俺たち。そして、ヒントを前に再び頭を悩ます。長年に渡ってコナンを読んできた俺の中には培われた推理力が存在する。そいつを引き出せ。...わかった！犯人は●●だ！駆け出す俺。会場内の出口に、「解答」を提示するコーナーがある。先にそこへ着いた者が勝者だ。後ろを振り向く。オッサンはいない。勝った！
解答コーナーのスタッフに、犯人を提示する。勝利の雄叫びを上げながらガッツポーズをする俺。真の探偵はこの俺だ。「あ...違いますね」。ハッ、隣のやつ、犯人を間違えてやがる。っていや、隣には誰も居ないじゃねえか...。どうやらその言葉は俺に向けられていた。あり得ない。犯人はこいつだ。こいつしかいない。するとスタッフが申し訳なさそうに更なるヒントを口にする。閃く俺。「謎は全て解けた。真実はいつもひとつ...！」

■決死のナンパ、そして...
爽快な気分で会場を出ると傍にグッズコーナーを発見。その中に「くじ引き」があった。1回500円。これをやろう。列に並ぶと前には綺麗なお姉さんの2人組。良い香りがする。クンクン...、ほう、この人たちもコナンを読むのか。自分の番が回ってきたので、念を込めて「ｻｧｯ！」っと勢い良くくじを引く。結果はB賞で上から2つ目に良い。コナンのクッションを獲得した。隣を見るとお姉さんたちも同様のくじをやったみたいだが、結果は残念ながら一番下のF賞だったようだ。商品のクリアファイルを手にしている。ああ、これはチャンスかしら。帰宅へと向かうお姉さんたちにおもむろに近づく。背後へ近づく。忍び寄る。「あの...良かったら商品交換しません？」と上擦った声を掛ける。驚いて振り向くお姉さんたち。ああ、可愛い...右の子は竹内由恵に似ているな。「えっ、....良いんですか？」と喜びと動揺の混じった返答をする彼女たち。「ええ、良いですよ。どうぞ。コナン好きなんですね。自分も大好きなんですよ。会場内の事件解けました？ちょっと簡単過ぎましたよね。手応え無かったなぁ。自分、遠方から来たんですよ。良い時間だし、これから飯行こうかなと思うんですが、何処かお薦めあります？なんなら一緒に行きたいなぁ...なんて。あはは」と返す俺。が、反応はすこぶる悪い。深追いせず、クッションを渡してその場から離れた。
さて、せっかく名古屋まで来たのだから手羽先でも食って帰るか。ふと先ほどのオッサンが視界に入る。俺との戦いに敗れたせいか、心なしその肩は沈んで見える。
お互い独り身。コナンを肴に酒を酌み交わすのも悪くないか。そう思ってオッサンに近づこうとすると、30代くらいの女性と小学生くらいの女の子がオッサンのもとに駆け寄ってゆく。...なるほど、独り身は俺だけか。

そのまま名古屋駅へ向かい、天むすを買って帰路に着いた。いやぁ、楽しかった。次回は何処で開催されるかわからないけど、また行きたいね。名探偵コナン、20周年おめでとう。