■ サッカープレミアリーグにおいて、今シーズンついにレスターが奇跡とも下剋上ともいえる優勝を果たした。日本代表FW岡崎慎司が所属しているのだが、もともと下馬評が低かっただけに本当にこの優勝は画期的といえよう。

元々昨シーズンは中盤戦から最下位をうろつき、終盤の奮闘で何とか14位で残留。そういう意味では現地の目の肥えたサポーターですら上位進出なんて意識してなかったようなチームだった。岡崎が加入してもせいぜい彼がノーマークでどれだけ得点を稼げるかというのが唯一の楽しみでしかなかったはず。その岡崎が36節時点で5点と得点は多くないが、レスターはシーズン序盤から思いのほか好調が続き、中でもエースのFWジェイミー・ヴァーディーが22得点と大爆発。アーセナル、マンチェスターC、マンチェスターU、トッテナムとの優勝争いとなったものの、23節からは首位をキープ。マンC、マンUがついていけなくなったと同時に猛追を見せたのがトッテナムだが9位と沈んだチェルシーに痛み分けで2試合を残してレスターが優勝を決めたのだ。

それにしても今シーズンのレスターはすごく安定していたのではないか。36節時点で22勝11分け3敗、得失点差も＋30(64-34)というのはもう文句はいえない。さらに岡崎はこれまで強豪相手の得点が少なく、プロではレスター以前に優勝経験はない。マインツでは2年連続2ケタ得点をマークしたが、現在のレスターでは今のところ5得点。代表では2014年W杯のGS3戦目コロンビア戦で1点とったが、当時のコロンビアは決勝トーナメント進出が決まり、主力を8人も入れ替えた（後半はハメス・ロドリゲスを投入）という背景がある。それだけに、献身的なプレースタイルが評価されながらも、弱い者イジメとか帳尻合わせの印象が強かった。ただ今回のレスターでの優勝で岡崎に対する見方は上方修正していいと思う。そして素直に優勝を称えたい。

そして今回の岡崎レスターの優勝で、これまでの上位陣への人気偏重という風潮が変わればいいなあとも思った。特に日本では、野球は巨人かソフトバンクでなければ負け犬とか、安心してプレーできないという価値観が長く定着していたが、もともとアウトサイダーだったチームが優勝したことで少しは見方が変わるのではないか。折しも昨年セ・リーグはヤクルトが優勝している。これからは高校・大学の有力選手も岡崎みたいにあえて下位チームで頑張って、巨人やソフトバンク相手に全力でぶつかるような姿勢を持ってほしい。
JリーグでもJ1は昨年から2ステージ制が始まり、そこで上位となった広島、G大阪、浦和、FC東京、鹿島、あとはせいぜい川崎までが上位の指定席と位置付けられ、今年もその勢力図は変わらないとみられていたが、今年は9節終了時点とはいえ、昇格組の大宮と磐田が健闘している。また開幕3試合で新外国人監督解任など、2012年G大阪の二の舞と見られていた柏も監督交代後4勝2分けと調子を上げているだけに、前期優勝争いが少しずつ盛り上がりつつある。こうした中でイングランドで岡崎の所属するレスターが下剋上を果たしたとなれば、もっと下位にいるチームにとっても励みになるのではないか。近年上位と下位の格差が拡大することに不満がある私としては、今回の岡崎レスターの優勝で、上位陣偏重の風潮に歯止めがかかることに期待している。やはりスポーツでも他の業界でもはじめから上下格差が大きかったら競争原理が低下して面白くないし、文化にはならないからね。

余談だが、イタリアのセリエAでもサッスオーロがよく頑張っていて、残り2試合の時点で6位にたった。もともとはACミランが6位決定的と見られていたが、シニシャ・ミハイロビッチ監督を解任しながら、その後下位チームに苦戦続きでついにサッスオーロに抜かれて7位となった。サッスオーロはもともと人気も実力も大したことなかったが、本田圭佑が加入してからのACミラン相手にはいい試合をすることが多く、本田ビジネスにおぼれたイタリアサッカー界に警鐘を鳴らすようなイメージが感じられるので近年好感が持てる。それだけにサッスオーロにはぜひ今回欧州リーグ出場権を獲得するために残り2試合頑張ってほしい。そしてセリエAの審判たちは、間違ってもACミランを欧州リーグ圏内に上げるための贔屓判定はしないでほしい。

それにしても近年アベノミクスによる理不尽な値上げ・消費税増税で苦痛となったゴールデンウィークにおいて、この手の下剋上物語が見られると何だか嬉しくなってくる。弱者にとって下剋上はお楽しみの一つだからね。サッスオーロは優勝はなくとも、せめて6位躍進で欧州リーグ出場という新たな歴史を作ることを期待しているよ。