■ 「メッシ以上の選手育成」が目標、北朝鮮唯一のサッカーアカデミー
AFP=時事 11/25(金) 8:32配信
北朝鮮で唯一のサッカーアカデミー、平壌国際蹴球学校。
国際社会からの制裁にピッチでの厳しい現実と、同国のサッカーを取り巻く現状は明るくないが、彼らの目ははるかな高みを見据えている。
アカデミーの目標は、リオネル・メッシ(Lionel Messi)以上の選手を輩出し、北朝鮮代表が世界を席巻することだ。
北朝鮮男子代表のFIFAランキングは126位(2016年11月現在)。
アルメニアとエチオピアの間に位置し、何より韓国、日本、中国といったほかの東アジア勢には遠く及ばない。
しかし、北朝鮮政府がスポーツでの成功を重要なプロパガンダ手段に位置づけていることもあり、2013年に開校したこの学校の野望は果てしない。
今回、施設の案内を担当してくれた同校コーチのリ・ユイル氏は、バロンドールに4度輝いたFCバルセロナのスーパースターの名前を引き合いに出し、次のように語っている。
「われわれはメッシのような選手を上回る技術を持った、超優秀な選手を育成するためのトレーニングを行っています。そのためにはまずは近い将来にアジアを支配しなくてはなりません。私としては、いずれ世界を席巻したいと考えています」
サッカー北朝鮮代表が最も大きな輝きを放ったのは、1966年のW杯イングランド大会までさかのぼる。
GKにリ氏の父親であるリ・チャンミュンを擁したチームは、強豪イタリアを1-0で破ってベスト8入りを果たした。
しかし、そこから2010年の南アフリカ大会でW杯本大会に復帰するまでには44年の歳月を要し、しかも結果は3戦全敗のグループリーグ敗退だった。
こうした状況のなかで、メッシを超える選手を養成するというのは途方もない目標のようにも思えるが、全寮制のアカデミーに所属する9歳から15歳の子供200人(そのうち4割は女子)は、全力でボールを追いかけている。
練習メニューのほとんどは一般的なものだが、なかには生徒たちがきっちり整列してコレオグラフィーを作り、音楽に合わせてボールスキルを披露するという変わった練習もある。
その場面の映像は、学校の宣伝素材として使われるそうだ。
■代表監督は現実を指摘
生徒たちは人工芝のピッチで練習に汗を流し、それ以外の時間は、歴代の指導者の肖像画の飾られた教室で学業にいそしむ。
しかし、男子フル代表で指揮を執るノルウェー出身のヨルン・アンデルセン監督は、鼻息の荒いリ氏とは対照的に、世界レベルのスターの出現はまだ考えにくいと指摘する。
アンデルセン監督は
「アジアレベルで優秀な選手が生まれることはあるかもしれないが、リオネル・メッシを輩出できるとは思わない。才能ある選手は多いが、国を離れられないのが痛い。外に出られないんだ」
と話し、欧州の「高いレベル、競争の激しいサッカー」を経験する必要があるとの見解を示した。
5月に北朝鮮代表と1年間の契約を結んだアンデルセン監督は、
「いつまでも中(北朝鮮)でプレーしていたら、優秀な選手が生まれるのは難しい」
と話している。
ピッチ外の状況も厳しい。2015年の女子W杯では、前回大会の出場選手5人に薬物違反があったとして、予選と本大会への参加を禁止された。
当時のチーム医師は、雷に打たれた選手を治療するため、鹿の角の成分の入った「漢方薬」を処方しただけだと主張している。
2016年11月には、わざとゴールを許したとして、男子U-16代表GKのチャン・ペッコが罰金と1年間の出場禁止処分を受けた。
相手GKからのキックを見送ってそのままゴールに入れてしまう失笑ものの動画は、ネット上でまたたく間に拡散した。
北朝鮮サッカーにとって一番の障害は実戦不足だ。
国内のクラブはアジアサッカー連盟(AFC)の管轄大会に参加しておらず、実戦の場は11チームで構成される国内リーグ戦のみ。
試合数は少なく、観客もわずか200〜300人ほどしか集まらない。
アンデルセン監督は、
「代表チームの選手は私と一緒にいますが、実戦経験を積むことができません。いつも練習して、練習して、練習しての繰り返し。試合ができないんです」
と話した。
■退路を断って臨む生徒たち
もう一つの問題は国際社会からの制裁措置だ。
北朝鮮が2016年に2回の核実験を行ったことを受けて、スイスが同国に対して制裁を行うと、スイスに本部を置く国際サッカー連盟(FIFA)も3月、北朝鮮を対象とした170万ドル規模のサッカー発展プロジェクトを凍結した。
5月にはイタリア・セリエAのフィオレンティーナのユースチームに加入した北朝鮮の選手の給料を、国家が「ピンハネ」しているとして、イタリア政府が憂慮の意を表明している。
結局この選手は7月、「政治的な問題」でクラブを退団することになった。
平壌国際蹴球学校も、先ほどのプロジェクトから資金提供を受けていたため、現在は資金繰りの問題に直面している。
北朝鮮サッカー協会のソン・ヒェヨン氏は、
「制裁によって、多くの困難が生じました。ここも例外ではありません」
と話している。
学校の入学選考は非常に厳しく、合格したとしても、試験の連続によって容赦なくふるい分けられ、毎年多くの生徒が故郷へ送り返される。
コーチのリ氏は、
「才能のない人間の排除は避けられないことです」
と話す。
生き残った精鋭は、国際経験を積む一番の近道である代表チーム入りの機会が与えられるが、それでも海外クラブでのプレーを許可される選手はほんの一握りだ。
このように、アカデミーの卒業生であっても、将来の見通しは極めて限定的と言わざるを得ない。
しかし、生徒たちのほとんどは国を代表して戦うことしか考えておらず、うまくいかなかった場合の代替案に考えをめぐらせる人はいないようにみえる。
リ氏の指導を仰ぐ15歳の生徒は、
「僕らは何がなんでも成功するつもりでここへ来ました。ダメだったときにどうするかなんて、考えたことがありません」
と語った。
[ 2016年11月25日 - 12:34 ]
【北朝鮮唯一のサッカーアカデミー】
このトピックへのコメント:
(11/25 - 23:01) 9歳からってだいぶ遅いでしょ。。メッシ目指すなら2〜3歳から始めて、神経系や空間認知能力など徹底的に鍛えるべき。