■ サッカーW杯出場枠48カ国への拡大は質・価値の低下を招く！！もう商業主義はやめろ！！

どうしても納得いかないことがある。

サッカーワールドカップの出場枠を48カ国まで拡張するなんておかしい！！

このW杯出場枠拡張の提案は今年からFIFA会長を務めることになったジャンニ・インファンティーノ氏によるものだ。インファンティーノ会長はこの拡張案を2026年大会から導入しようとしている。だが世界中からブーイングを受けている。その理由は「さらなる過密日程化の加速」「ワールドカップの権威・価値の低下」である。

発表された開催案として、48カ国のうち16カ国をシード国とし、残り32カ国でノックアウト方式の一発勝負を行い、その勝者と合わせた32カ国が従来通りの方式で戦うというものだった。しかし、プレーオフのような試合を大会直前に行うこの案は世界中から大ブーイングを受け、撤回を余儀なくされた。

そりゃそうだ。なぜ最初にわざわざ32カ国で一発勝負させて、そこで残ったチームとシード組の計32カ国で通常通りの方式でやるようにするのか？これだけでも日程的にムダが見られるではないか。そもそも48カ国中シードが16カ国もあるのがおかしい。その後の代案としては、3カ国ずつ16グループに分けてグループステージを行い、各組の2位以上の32カ国による決勝トーナメントを行うというものだが、3分の2が残るなんてあまりにも甘い。短期決戦で、さらに出会い頭の要素があるから、組み合わせや勢い・コンディション次第ではドイツやブラジルがここで敗退する波乱も考えられ、それを望むファンもいるだろうが、それでもやはり無意味であり、日程的にムダと思える。

上記の中では、出場チームは第1案ではたった1試合、第2案では2試合は戦えるだろうが、それだけで負けて敗退というのでは出場国にとって費用面で割に合わないだろうし、さらに別のやり方だとしても、なまじ参加国・試合数を増やしすぎることで、質が低下してしまうのがオチだ。さらには組み合わせの傾向からして、初出場国や実績の少ない国は否応なく常連国と同じグループになる可能性が高く、とんでもない惨敗ゲームも考えられる。にわかファンだったらこれだけで興ざめするだろうし、本物のサッカーファンでも現行通りの方がよかったと不満を感じるだろう。要は世界最高峰の大会でありながら価値が低下するということだ。

とにかく近年はサッカーにおいて、商業主義が目立ちすぎている。昨シーズンまで不本意な成績続きだったACミランは、本田圭佑で売り出そうという姿勢が敗因だった。それでも脱本田の動きを見せつつある今シーズンはセリエＡで欧州CL圏内はもとより、優勝も狙える位置につけている。Jリーグも今夏、英国動画配信大手のパフォームグループとの大型契約で財務基盤が強化されたが、相変わらず村井満チェアマンはACLでJクラブを優勝させるため、J1リーグの上位数チームだけ優遇するような形式をとっている。だが、こんな一極集中型のやり方では中国や韓国みたいに没落する危険性が高い。Jリーグは目先のACLで勝つよりも、下位チーム、さらには下部リーグまで着実に基盤を強化させる必要がある。それだけに村井チェアマンの今回のやり方には不満を感じる。カネが全てというならプロ野球界のドン渡邉恒雄氏と変わらない、いやむしろ渡邉氏の方が素直で潔さを感じる。女子サッカーも2011年W杯優勝からは何かとメディアで騒がれ、グラウンド外のことまで過剰に報道されたが、2012年のロンドン五輪銀メダル獲得以降はJリーグに比べて注目度は明らかに低下、2016年リオ五輪出場を逃すなど、人気も勢いも下降する一方となった。

サッカーに限らず、競技そのものが好きなファンは確かにいる。だが本当に好きなファンは得てして少数でしかない。だから新規ファンを集めるために競技そのものの魅力を伝えるだけでは限界もあるのだが、競技自体のレベルや価値を低下させかねないようなレギュレーションや小手先だけの改革では新規ファンもすぐに白けることになる。また筋金入りのファンにしても、過去のやり方を懐かしみ、競技から心が離れる可能性もある。競技、というかスポーツは質や技量の高さがあってこそナンボなのだ。そして上位と下位の力の差が初めから大きすぎると競争原理や熱が失われることになる。それだけに世界最高峰の大会であれば、もっとハードルを高め、難易度の高さ、拮抗した試合ぶりで人の心を鷲掴みにすべきではないだろうか。だからサッカーW杯の出場チーム数は現行通りの32カ国、あるいはそれ以下で密度を濃く、スリリングなものにすべきだ。だからこれ以上商業主義でサッカー、ましてW杯の質や価値を下げるのはやめてほしい！！