■ 5月14日、あの夜の死闘が甦える。新章スタート。
カランコロン……
扉が開き、恰幅の良い男が入ってくる。
「あら、遅かったじゃないの」
待ちくたびれた女は気だるそうにそうに口を開く。
「おう。仕事が捗ってな。マスター、いつもの」
「えっ。お客さん、誰です?」
「......。テキーラくれテキーラ」
ここは新宿二丁目に佇む、とある隠れ家バー。今店に足を踏み入れたハードボイルドを気取るこの男の名は松木コク太郎。仕事は表向きジャーナリストであるが、本業は二丁目きっての優良店『三ツ星マッスルデラックス』のスカウトである。
「それで?見つかりそうなの?」
コク太郎が咥えた煙草に、女はおぼつかない様子で火を点ける。
「アチチっ...!うっ、うわああああああああああああ」
袖を焼いた火はまたたく間にコク太郎の全身を焼き尽くさん勢いで広がったが、マスターが放った消化器で鎮火された。
気を取り直しコク太郎は答える。
「イキの良いのが一本や二本どころじゃねえ。たんまりいやがる」
黒焦げコク太郎は湧き上がる興奮を抑え切れないといった感じで腰を前後にカクカク動かし、泡だらけになったテキーラを一気に口に流し込んだ。
「ふふ、面白い話が聞けそうね」
「フヒヒッ...。たんまり聞かせてやる。今夜は寝かせねえんだからな」
・・・ 2日前
俺はうだるような暑さの中、泥レスが行われるという会場へ向かっていた。全く乗り気では無かったが、昨晩駅で泥酔しているブラジル人に肩を貸してやったところ
「アタシ名前ワシミウソン言ウネ。コレオ礼ネ。ココ行クト良イネ。アナタ幸セナルネ」
とポケットに無理やりチケットを捩じ込まれたのだ。男と別れたあと、上着が随分軽くなっていたので内ポケットを探ってみると財布がスられていた。やられた!
「あいつを、ワシミウソンとかいう男をぶん殴ってやりたい」
俺の財布の中には札は一枚も入ってないが、人妻クラブやおっパブの割引券がはち切れんばかりに詰め込まれている。いわば宝の山だ。本来ならばすぐにでもあいつを探し出しに出掛けるべきなのだが、生憎俺には期限が迫っていた。そう、俺が雇われ店長をやっているダンディーパブ『三ツ星マッスルデラックス』が深刻な人材不足に陥っており、3日以内にアテを見つける必要があったのだ。
「今日が期限日か。泥レス...こんな怪しげなところに真のマッスルを持つ男がいるわけねぇよな」
しかし今の俺には他に検討の付く場所が無い。俺は腹を括り、チケットに記載されている泥レス会場とおぼしき場所に到着する。
そこはなぜかアジア系の食材店だった。小一時間周辺をウロウロしていると、この店に似つかわしくないサーファー風の胡散臭い店主に見つかり俺は地下へと連れていかれた。どうやら泥レス会場は店の地下にあるらしい。
カビ臭い臭い。薄暗い照明。肌に感じる地響き。野太い歓声。ムンムンとした熱気。階段を降りるとそこは明らかに異空間だった。血走った目をした大勢の半裸男がところ狭しと会場を埋め尽くし、中央のリングではまさに今、猛者たちの戦闘が開始されようとしていた。
(続き・完全版は5月20日土曜日に公開予定)
■連載中
ヘンリク主役の官能小説『蜜壺症候群』
http://www.fuoriclasse2.com/cgi-bin/read.cgi?2017-05-12224424
■連載予告
セカタビ主役のフットボール世界旅『懺悔日記』
糸魚川主役のミステリー『迷探偵イット』
[ 2017年05月17日 - 21:59 ]
名無し77 (05/18 - 01:55) 楽しそうな企画が始まっているのですね。昔の中田ヒデの官能小説を思い出しますね。もう知らない人のほうが多そうですが。
(05/18 - 00:06) 一度読み始めると癖になるな
名無し123 (05/17 - 23:48) 「良いオトコ選手権フォリーガ」は泥レスに引き継がれるんですかね。20日の完全版を楽しみにしてます。
エイスメンディ (05/17 - 22:57) これは面白い。安定のワシミウソン
(05/17 - 22:56) 予告連載が気になるw
ヘンリク (05/17 - 22:30) 別に迷惑とも嫌でもないけど、弄るなら面白くしてねって感じ。
(05/17 - 22:17) ヘンリクは嫌がってないのか? この前のやつ。
(05/17 - 22:11) ところでなんで今回は途中まで?
(05/17 - 22:10) フォメ吉と辰巳は好きだわ
(05/17 - 22:05) 神コテきた
辰巳 (05/17 - 22:04) あら。レヴィンゴフスキも皆もちゃんと登場するわ。今回は泥レスなのよ。
Revigo (05/17 - 22:01) まさかの舞踏会完全スルー(笑)
(05/17 - 22:00) ちょっと気になる最後の連載