■ KAGEURAにインスパイアされたサイコスリラー。
※登場人物
影之浦・・・本作の主人公。愛媛出身で、現在は東京に身を置くサラリーマン。
あいつ・・・影之浦そっくりの顔を持つ謎の男。
瀬矢奈・・・影之裏の彼女。影之浦と同棲している。
万田忠夫・・・影之浦の後輩
清水もこみち・・・影之浦の友人。エスニック料理屋を経営している。
もこみちの店へ行った翌朝、ワイは目を覚ますと酷い頭痛に見舞われた。これは二日酔いやな思ったんやが、同時に悪寒にも襲われた。ワイは風邪を引いた。
ワイは性格的に他人に頼み事をするタイプやない。どちらかといえば一人で抱え込む方を選ぶ。やから仕事がハードになればなるほどワイの孤独さは増し、心身共に追い詰められた。つまるところ、ワイは疲れとったんやな。瀬矢奈の勧めもあって、ワイは会社を休むことにした。気掛かりなのは「あいつ」のことや。「あいつ」は今日もあの電車に乗っとんやろか。しかし別に実害があるわけやないし、あるのは気味悪さだけや。気にしてもしゃーないと思い直してワイは再び深い眠りについた。
夕方、瀬矢奈が帰宅した物音でワイは覚醒した。まだ明確に説明してへんかったけど、ワイの彼女こと瀬矢奈とは同棲しとる。瀬矢奈が務める不動産でウインドウ越しに彼女の姿を見てワイは一目惚れした。ほんで勢いに任せてナンパしに行ったのが、ワイらの馴れ初めやな。
「ごめんね。起こしちゃった?体調はどう?」
買い物袋を手に下げた瀬矢奈がワイに駆け寄ってくる。
「ええんやで。まぁまあやな」
ワイは答える。多少頭は重いがこれなら明日は仕事に行けるやろ。瀬矢奈は安心したような顔をしたあと、ワイの頬を抓った。
「あんまり心配させちゃダメだよ。おじや作るから待っててね」
「お、おう。すまんな」
瀬矢奈はにっこり微笑み、キッチンへ向かうと仕度を始めた。
ええ女や。普段気ままな一人暮らしやけど、身体が弱っとるときは一人暮らし程辛いもんはない。特にこの大都会で、一人を感じるんはほんま辛い。職場では孤独でええ。ただ、プライベートでは身を寄せ合うことの出来る相手を、ワイはずっと求めてたんや。ワイが瀬矢奈と同棲始めたんは必然やったと言ってもええな。
瀬矢奈のお手製おじやは最高やった。この女と一緒になりたい。ワイはその晩、改めてそう思った。
翌日、体調が元通りになったワイは出勤した。その日もやっぱり7時30分発の山●線の電車に乗ってな。でも併走する京●東北線の電車の中に「あいつ」の姿を見つけることは出来へんかった。それでええんや。
会社に着くと万田忠夫の姿が目に入った。
「万田やんけ。昨日はすまんな。迷惑かけた」
万田は相変わらずのアホ面をワイの方に向けながら、馬鹿でかい声で喋りよる。
「影之浦さんじゃないですか。大丈夫ですよ。影之浦さんの仕事を手伝おうと思ったんですが、わけがわからなくてやめました」
「声のトーン落とせや……。まぁお前には期待してへん」
万田はワイの言葉に耳を傾けたんか声を潜めた。
「実際のところ、昨日は何してたんですか?」
「ファッ!?寝てたに決まっとるやろ。一歩も外に出てへんわ」
なんやこいつ。質問の意味がわからん。
「いやね、昼休みに社員食堂で影之浦さんを見掛けたって人がいるんですよ。おかしいですよね。影之浦さんは風邪で休んでたわけですし、そんなはずないですよね」
「ひ、人違いやろ」
途端、ワイの動悸が激しくなる。
「でも実は僕も見たんですよ。僕は食堂ではなくて、帰る途中の電車の中で見ました。京●東北線です。後ろ姿をチラッとだけだったんですけど、僕が影之浦さんを見間違えるかなぁ」
それを聞いてワイは凍り付いた。心当たりがあるレベルやない。「あいつ」や。「あいつ」がワイの職場に現れよった。
(続く)
※辰巳ノベルズはフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
[ 2017年08月28日 - 19:31 ]
アッヲ (08/28 - 19:36) な、なんやこれ
アッヲ (08/28 - 19:36) な、なんやこれ